2021年1月28日木曜日

ヒトの言葉 機械の言葉


題名:角川新書 ヒトの言葉 機械の言葉 「人工知能と話す」以前の言語学

著者:川添愛

発行:KADOKAWA(2020.11.10)


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☆☆☆★★


言語学の視点から人工知能の言葉がヒトの言葉とどう異なるかについて書かれている本です.わかりやすく書かれていますが,その分,人工知能の中身については踏み込んでいません.著者自身も書いているように,その前についての解説が易しく書かれています.易しすぎて当たり前に思えることも丁寧に書かれていますが,パラグラフライティングがなされているので,そう思える部分は飛ばして読んでもわからなくなることはありません.そのあたりの書き方は,私のスタイルと似てるかも.

2021年1月18日月曜日

2分間ミステリ

題名:ハヤカワ・ミステリ文庫 2分間ミステリ


著者:ドナルド・J・ソボル

訳者:武藤崇恵

発行:早川書房(2003.11.15)


TWO-MINUTE MYSTERIES

by Donald J. Sobol

1967


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☆☆★★★


2分間で読めるミステリクイズ集です.全体的にクイズとしての難易度は高くはありませんが,時代や文化的な背景が異なるとわからないものも含まれています(訳者はあとがきで「数篇割愛した」と断っていますが).2003年当時でも,電気時計,と聞いて想像できる人はどのくらいいたのだろう?

カラスは飼えるか


題名:カラスは飼えるか

著者:松原始

発行:新潮社(2020.3.20)


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☆☆☆☆☆


カラスに限らず身近な鳥についてのあれこれが書かれている本です.カラスの飼い方を書い他本ではないことは,緒言で著者によって明かされています(タイトルだけで買った人は残念でした).Web 連載時に人気がダントツだったタイトルということで,キャッチーであることは間違いなさそうではあります.無理矢理カラスに寄せている部分もありますが,全体的に著者のカラス愛に満ちています.とくに最終章の5章が秀逸.企画的に書きたいことが書けていたからでしょうか.結言で本(というか Web 連載)の経緯が紹介されていますが,やはり呑み会由来とのこと.このご時世では面白い本の企画も出なくなりそうで,寂しい限りです(でも,私には呑み会由来の本はないなぁ).

2021年1月10日日曜日

いつになったら宇宙エレベーターで月に行けて、3Dプリンターで臓器が作れるんだい!?


題名:いつになったら宇宙エレベーターで月に行けて、3Dプリンターで臓器が作れるんだい!? 気になる最先端テクノロジー10のゆくえ

著者:ケリー・ウィナースミス,ザック・ウィナースミス

訳者:中川泉

発行:化学同人(2020.4.25)


SOONISH

tern Emerging Technologies That's Improve and/or Ruin Everything

by Zachary Weinersmith, Kelly Weinersmith

2017


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☆☆☆★★


近いうちに実現するといわれている技術がいまどうなっているかについて,ユーモアを交えて書かれている本です.タイトルにあるように,宇宙エレベーターも取り上げられています.著者たちが重視しているらしい「ユーモア」が,国の違いか言語の違いかによってかもしれませんが,面白くない,というかちょっとうるさく感じます.内容はしっかりしてるだけに,残念.

タイトルには「宇宙エレベーターで月に行けて」とありますが,宇宙エレベーターで直接月に行くことはできません.本文中にもそのような記述はないので,想像するに,日本語版にタイトルをつける際に表紙絵(原著と同じ)に引きずられのではなかな.でも宇宙服を着た人が立っているのは,本文の記述からすると,月ではなく小惑星ですね.

それから,宇宙エレベーターの部分に比強度の単位として「ユーリ」が出てきますが,これは使ってほしくなかった.アメリカの宇宙エレベーター関係者は使っていますが,SI単位ではないし,広く認められているわけでもない,内輪ネタだと思います.


2021年1月4日月曜日

「役に立たない」科学が役に立つ


題名: 「役に立たない」科学が役に立つ

著者:エイブラハム・フレクスナー、ロベルト・ダイクラーフ

監修:初田哲男

訳者:野中香方子、西村美佐子

発行:東京大学出版会(2020.8.27)


The Usefulness of Useless Knowledge

by Abraham Flexner

with a companion essay by Robbert Difkgraaf

2017


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☆☆☆★★


プリンストン高等研究所の創立者と現所長による2篇のエッセイがまとめられている本です.二つのエッセイが書かれたのは1939年と2017年と80年の隔たりがあるのに,内容は似ています(似せて書かれた可能性もありますが).ただ,現在(2017年)の状況をある面から切り取っていることは間違いなく,1939年のその後の世界がどうなっていったかは,心に留めておく必要を感じます.

内容は興味深いのですが,編集というか構成で損をしている気がします.2篇のエッセイだけでは本にならないとの判断からでしょうか,コラムの数が多く,しかも本文を分断するように入っています.とても読みにくく,残念です.

22ページに「地球の重力場とこれらの衛星の動きは,時計の進み具合を早めたり遅くしたりし,一日に三十ミリ秒変化させる.もしアインシュタインの理論がなければ,GPS追跡装置は,一日でおよそ七マイル〔訳註:約六・四キロメートル〕の誤差を生むだろう」とありますが,「一日に三十マイクロ秒」の誤りだと思います.これだけなら単純な間違いのようにも思えますが,「七マイル〔訳註:約六・四キロメートル〕」はどうやって計算したのか疑問です.1 mile = 1.6 km なので,7 mile = 11.2 km ですよね.NM だとするとずれはさらに大きくなるし.どうやったら 6.4 km が出てくるのか疑問.原書を見ていないのでわからないのですが,もしかすると 7 mile の方が違うのかな? でも相対論で計算してもそうはならない気がしますが.