2021年9月24日金曜日

戦争の物理学


題名:戦争の物理学

著者:バリー・パーカー

訳者:藤原多伽夫

発行:白揚社(2016.3.25)


The Physics of War: From Arrows to Atoms

by Barry Parker

2014


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☆☆★★★


兵器の変遷について書かれている本です.タイトルは『戦争の物理学』ですが,物理については期待外れです.「物理学」と名打つのなら,物理の説明はもっときちんとすべき,と感じます.たとえば,40頁の「慣性に打ち勝とうとすれば力が必要で」という説明や,210頁の衝撃波を説明する図,212頁の弾道の図の放物線,232頁の「期待を前進させるには,推力が抗力を上回らなければならない」という記述,273頁の図中の振幅の説明,293頁の「ジャイロ効果」の説明,324頁の「このときロケットには,自重による下方向への重力と,発射台からの反作用の力がかかっている」という記述,378頁の「核融合は重い元素では起きず,非常に軽い元素でのみ起きる」という記述など,それはまずいでしょ,という説明が多く見受けられます.歴史的な事柄に関しては詳しく書かれているのですが,そちらの信憑性まで疑わしく感じられてしまい,残念です.

また翻訳に関して,原著を確認していないので確定的なことはいえませんが,47頁の「螺旋状の回転翼」の「回転翼」はおそらく “rotor” で,飛行機の話ではなく,回転による送り機構のことなので,訳としては「螺旋状の回転子」ではないかと思います.284頁のマグネトロンを説明する図中に「回転する電子雲」とありますが,「電子雲」というと原子核を取り巻く電子の描像のことになるので,ここでは「電子群」のような言い方のほうがいいかと思います.

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