2020年12月28日月曜日

MMT 現代貨幣理論とは何か


題名:講談社選書メチエ MMT 現代貨幣理論とは何か

著者:井上智洋

発行:講談社(2019.12.10)


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☆☆☆☆★


 MMT(現代貨幣理論)に全面的に賛成でも全面的に反対でもないという著者によって書かれているMMTにまつわる本です。MMTそのものの説明というよりも,今後の日本の財政政策をどうすべきかを解く鍵のひとつとしてMMTの考え方を使う,という感じで解説されています.管理通貨制度や国債についてつらつら考えていたことの答え合わせをするように読みました.

2020年12月24日木曜日

中村好文 小さな家の物語

題名:中村好文 小さな家の物語

著者:中村好文

発行:平凡社(2019.7.26)


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☆☆☆☆★


建築家の中村好文が設計し、1992年に竣工した「上総の家II」を案内している本です.中村さんの本にしてはイラストが少なく,写真が多い印象です.多くの人に読んでもらって,暮しと家について考えていただきたるなる本です.それにしても,なぜタイトルに名前を入れたんだろう?

見えない文字と見える文字


題名:見えない文字と見える文字 文字のかたちを考える

著者:佐藤栄作

発行:三省堂(2013.5.30)


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☆☆☆☆☆


日本語の文字の形について書かれている本です.ひらがな・カタカナの由来や丸文字の意味など,色々納得できる内容です.とくに,カタカナの字形についての考察は目から鱗でした.文字を使うすべての人にオススメ.

2020年12月8日火曜日

クロストーク

題名:新☆ハヤカワ・SF・シリーズ クロストーク

著者:コニー・ウィリス

訳者:大森望

発行:早川書房(2018.12.31)


CROSSTSLK

by Connie Willis

2016


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☆☆☆☆★


コミュニケーションの未来,というか,テレパシーにまつわるドタバタについての小説です.さすがコニー・ウィリス,厚い.でも,飽きずに読ませます.SFなのにメカニズムなんかに踏み込まないあたりも,さすが.ブックにて.

2020年12月6日日曜日

FEYNMAN


題名:FEYNMAN

著者:Jim Ottaviani, Leland Myrick, Hilary Sycamore

発行:First Second(2011)


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☆☆☆☆★


ファインマンの伝記漫画です。だいたい知っているエピソードですが,日本の漫画とは異なるなんとも味のある絵で,楽しく読むことかできました.台詞もファインマンさんの言い回しを踏襲しているようです.

2020年12月5日土曜日

マンガでわかる! 今日からドヤれる科学リテラシー講座


題名:マンガでわかる! 今日からドヤれる科学リテラシー講座 教えて!夜子先生

著者:くられ,くがほたる

発行:化学同人(2020.7.10)


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☆☆☆★★


科学リテラシーについて,というか,似非科学に騙されないようにするにはどうしたらいいかについて,書かれている本です.本の厚さと価格に対して情報量が少ないですが,漫画とLINE風の吹き出し会話による構成なので,仕方がないところです.おそらく手にとってもらいやすくするためだと思いますが,そこがこの本の(この手の本の)一番困難なところで,読者層として想定している人たちにいかに届けるかが課題です.この本も,既に科学リテラシーがあって,「そうそう」と思いながら読んでいる人が多いのではないか,と勝手に想像しています.あと個人的には,数値の単位を括弧で括るのはカッコわるい,と思ってます(ゴメンナサイゴメンナサイ).

2020年12月4日金曜日

獣医学を学ぶ君たちへ 人と動物の健康を守る

題名:獣医学を学ぶ君たちへ 人と動物の健康を守る

著者:中山裕之

発行:東京大学出版会(2019.5.15)


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☆☆☆★★


「獣医師の職域についての正しい情報」が書かれている本です.動物病院の獣医師だけではない,全体像を知ることができます.豚肉生姜焼きが獣医解剖学者によって発明された,というのは知りませんでした.感謝しかありません.

2020年11月13日金曜日

時を歩く

題名:創元SF文庫 時を歩く 書き下ろし時間SFアンソロジー 

著者:松崎有理,空木春宵,高島雄哉,門田充宏,石川宗生,久永実木彦,八島游舷

発行:東京創元社(2019.10.19)


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☆☆☆☆★


創元SF短編賞受賞者による時間SFのアンソロジーです.いまどき短編SFでただのタイムトラベルものはないよねぇ,と思いながら読みました.案の定,まあこういう方向だよね,という作品が多く,好感が持てました(どういう方向かはネタバレになるので,ご自分でお確かめください).

2020年10月2日金曜日

宙を数える


題名: 創元SF文庫 宙を数える 書き下ろし宇宙SFアンソロジー 

著者:高山羽根子,酉島伝法,理山貞二,オキシタケヒコ,宮西建礼,宮澤伊織

発行:東京創元社(2019.10.31)


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☆☆☆★★


創元短編賞の受賞者による書き下ろし宇宙SFのアンソロジー です.なにをもって「宇宙SF」というのかよくわかりませんが,分類の細かいことは気にしなくてもいいのかな.宇宙なんだからこの世のすべてを含む,ということか.読み味の異なる掌編が集まっていて,楽しい本です.

2020年9月21日月曜日

数式を使わない物理学入門


題名:角川ソフィア文庫 数式を使わない物理学入門 アインシュタイン以後の自然探検

著者:猪木正文

監修:大須賀健

発行:KADOKAWA(2020.5.25)


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☆☆☆☆★


1963年にカッパ・ブックスから出ていた本の文庫化です.半世紀以上前に書かれた本なので,さすがに内容は古いのですが,この半世紀でずいぶん進歩したのだな,と感慨に浸ることができます.内容のアップデートは本文ではされず.監修者の注として加えられています.

数式を使わない,と宣言していますが,不確定性原理の式が,日本語ではありますが,3か所(p108, p120, p127)にでてきます.変数を日本語にすれば式ではない,という論理かな.


2020年8月30日日曜日

死んだら飛べる

題名:竹書房文庫 死んだら飛べる

編著:スティーヴン・キング,ベヴ・ヴィンセント

訳者:白石朗,中村融,安野玲,伊藤典夫,田口俊樹,西崎憲,矢野浩三郎

発行:竹書房(2019.10.3)


Flight or Fright

Edited by Stephen King and Bev Vincent

2018


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☆☆☆★★

飛行機に乗っている時に読むと怖くなるお話のアンソロジーです.本当は機上で読みたかったのですが,このご時世で飛行機に乗る機会がなくなってしまったのが残念です.

389ページの「至急出勤」は「至急出動」ですね   .


2020年7月11日土曜日

ベイズ推定入門 モデル選択からベイズ的最適化まで

題名:ベイズ推定入門 モデル選択からベイズ的最適化まで
著者:大関真之
発行:オーム社(2018.2,2)

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☆☆☆★★

ベイズ推定についてストーリー仕立てで書かれている本です.数式は出てきません.意図はわかるのですが,ただ言葉の紹介をしているだけで,逆にわかりにくく感じました.難しいですね.たとえば,28ページの「ベイズの定理」の紹介では,等号を使っていませんが,等式だと思われてしまうと誤解されてしまいそうです.分かりやすさを優先したのでしょうけれど,あまりいい手ではないと思います.

134ページの冒頭部分の「L1ノルムではダメなの?」は「L2ノルムではダメなの?」の誤り?

2020年7月9日木曜日

アナタはなぜチェックリストを使わないのか?

題名:アナタはなぜチェックリストを使わないのか? 重大な局面で"正しい決断"をする方法
著者:アトゥール・ガワンデ
訳者:吉田竜
発行:晋遊舎(2011.6.30)

The Checklist Manifesto: How to Get Things Right
by Atul Gawande
2009

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☆☆☆☆★

チェックリストがいかに有用かについて書かれている本です.知識の量と複雑性が個人が安全,確実に活用できる範囲を超えてしまった現代社会において,さまざまな場面で失敗を防いでくれる,と説いています.チェックリストをいかに短くするか,というあたりが参考になります.巻末の「チェックリスト作成のためのチェックリスト」だけでも読む価値あり.

132ページの「事故未遂」という表現はちょっと気になりました.事故に未遂はないだろうと.言語だとincidenrt だったのかな.「事故に至らなかった失敗」とか,あまり好きではない言葉ですが,よく言われるのは「ヒヤリハット」ですかね.

2020年7月2日木曜日

絵を見る技術 名画の構造を読み解く

題名:絵を見る技術 名画の構造を読み解く
著者:秋田麻早子
発行:朝日出版社(2019.5.2)

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☆☆☆☆☆

絵の見方について書かれている本です.美術館などでなんとなく絵を見ているだけでも楽しいですが,画家が絵に込めた意図やメッセージを読み取ることができるともっと面白くなります.そのための手がかりを詳しく教えてくれます.美術書などには書かれていることなので,とくに目新しいことはありませんが,例示されている絵の選択が素晴らしい.絵の意味を気にしていなかった方に,ぜひ読んでいただきたい本です.

40ページのラファエロの絵の説明に「弓矢のように矢印になっている」とありますが,矢印でものをさすようになったのはもっと後世になってからなので,ラファエロが矢印として意識したわけではないと思います.リーディングラインの説明として間違っているわけではありませんが.

他にも,構成の解釈などで異論のある部分(たとえば,132ページのティツィアーノの絵の「左の赤い旗が聖母子に対応する形でバランスを取って」というところは,赤い旗とバランスを取っているのは別の人物ではないか,とか)もありますが,そいういところも含めて楽しい本です.

2020年6月24日水曜日

交響曲第6番「炭素物語」

題名:交響曲第6番「炭素物語」 地球と生命の進化を導く元素
著者:ロバート・M・ヘイゼン
訳者:渡辺正
発行:化学同人(2020.5.10)

Symphony in C
Carbon and the Evolution of (Almost) Everything
Robert  M. Hazen
2019

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☆☆☆☆★

「炭素がつむいだ地球と生命の物語」について書かれた本です.著者は交響楽団のトランペット奏者でもあるとのことで,原著も交響曲をイメージした題名になっていますが,その意図を酌みつつ無理なく日本語の題名にしてあるあたり,さすがです(と思ったら,訳者は渡辺センセではありませんか.タイトルにどこまで関与したのかはわかりませんが,宜なるかな).内容的には,カール・セーガン『コスモス』の炭素限定版,といった感じで,とても楽しめました.ただ個人的には,文中に QR コードが入ってくるのが気になります.これも意図はわかるのですが,調べたいなと思う人は自分で調べるだろうし,そうでない人は QR コードを読むこともしないと思うのですが.

66ページに「結晶を通ったX線は散乱され,特別な方向で強まる(回折現象)」とありますが,回折干渉現象とした方がいいと思います(原著を確かめたわけではありませんが).

それから,154ページの「横に突き出た趣のパイプから」の「趣」がわからなかったのですが,どういう意味でしょうか(これもおそらく原著を調べればわかることだと思いますが
).

164ページに宇宙エレベーターについての言及もあります.表現はやや微妙ではありますが.

2020年6月14日日曜日

大学数学ことはじめ 新入生のために

題名:大学数学ことはじめ 新入生のために
編者:東京大学数学部会
著者:松尾厚
発行:東京大学出版会(2019.4.12)

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☆☆★★★

大学の初年級で習う数学の内容をまとめた本です.教科書ではなく資料集的に使われることが想定されていて,微分積分,線型代数の基礎や,述語論理,集合と写像など,一通り網羅されています.高校と大学の用語などの違いや,英語表記などもされています.資料として

2020年6月13日土曜日

大学で学ぶゾンビ学 ~人はなぜゾンビに惹かれるのか~

題名:扶桑社新書 大学で学ぶゾンビ学 ~人はなぜゾンビに惹かれるのか~
著者:岡本健
発行:扶桑社(2020.4.13)

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☆☆★★★

ある大学の「現代文化論」と別の大学の「メディア社会学」という講義で教科書として使われている本,だそうです.大学で「ゾンビ学」とい授業をしているわけではない,ということがわかるのは「おわりに」まで読んでからで,なんかがっかり,というか,「学」というには,考察が足りないように思いながら読み進めたので,まあそうだろうな,という感じです.ゾンビについて一通り知りたい,という方にはオススメ.

2020年6月12日金曜日

聖者のかけら

題名:聖者のかけら
著者:川添愛
発行:新潮社(2019.10.30)

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☆☆☆★★

中世のヨーロッパを舞台とした歴史ミステリーです.言語学や情報科学をテーマにした本を書いている著者なので,これもそんな感じかと思って開いたら,縦書きなので驚きました.読み応えがあり,背景情報もしっかりしているのだと思います.最後の方の重要な場面で,あれ?,となるのが残念(ネタバレになるのでかけませんが).

2020年6月7日日曜日

動物に「心」は必要か 擬人主義に立ち向かう

題名:動物に「心」は必要か 擬人主義に立ち向かう
著者:渡辺茂
発行:東京大学出版会(2019.12.25)

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☆☆☆★★

動物行動の研究方法としての擬人主義について書かれている本です.題名からはもっと広い意味の心について書かれている印象だったので,やや肩透かしを受けた感ありです.中身を見ていないジャケ買いなので仕方がないことではありますが,装丁もそれっぽいので完全に騙されました.最後の章「自著解題」から読まれることをお勧めします.著者の意図がはっきりします.

2020年5月31日日曜日

NASAに学ぶ英語論文・レポートの書き方

題名:NASAに学ぶ英語論文・レポートの書き方 : NASA SP-7084テクニカルライティング
著者:メアリ・K・マカスキル
訳者:片岡英樹
発行:共立出版(2012.2.25)

Grammar, Punctuation, and Capitalization: A Handbook for Technical Writers and Editors
by Mary K McCaskill
1998

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☆☆☆★★

NASA の表現形式集 NASA SP-7084 に役者の解説が加えられた本です.英文を書くときの参考に.資料として.

2020年5月19日火曜日

青少年のための自殺学入門

題名:河出文庫 青少年のための自殺学入門
著者:寺山修司
発行:河出書房新社(2006.9.20)

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☆☆☆★★

自殺マニュアル風に死について書かれている本です.「自殺入門」ではなく「自殺学入門」なので,自殺の仕方などについては書かれていません.資料として

2020年5月14日木曜日

ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?

題名:ファスト&スロー (上・下) あなたの意思はどのように決まるか?
著者:ダニエル・カーネマン
訳者:村井章子
発行:早川書房(2014.6.25)

THINKING, FAST AND SLOW
by Daniel Kahneman
2011

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☆☆☆☆★

認知心理学と社会心理学の知見から脳のはたらきがどのように捉えれているかについて,実際の行動などを例として書かれている本です.なぜ多くの人がこんな行動をするのだろうと疑問に思っていたことについて,結構思い当たる節があって,参考になります.

2020年4月29日水曜日

月はすごい 資源・開発・移住

題名:中公新書 月はすごい 資源・開発・移住
著者:佐伯和人
発行:中央公論新社(2019.9.25)

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☆☆☆☆★

月について,宇宙開発の立場から書かれている本です.たて穴の発見で利用が検討されている地下の溶岩トンネルについてなど,最新の月探査についても解説されています.

p78の「発泡して堆積が膨らむ」は「発泡して体積が膨らむ」ですね.

2020年2月10日月曜日

数の概念

題名:ブルーバックス 数の概念
著者:高木貞治
発行:講談社(2019.10.20)

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☆☆☆★★

高木貞治が岩波書店から1949年に出した『数の概念』の1970年改訂版に,秋山仁による解説が加えられて新たに出された本です.ブルーバックスのレーベルではありますが,中身は数学の本で,定理-証明の繰り返しになっているので,ご注意を.また,新たに加えられた解説が,全体の1/3を占めています.

2020年1月25日土曜日

答え合わせは、未来で。

題名:答え合わせは、未来で。(日産未来文庫)
著者:氏田雄介,小川哲,カツセマサヒコ,田丸雅智,長谷敏司,藤井太洋,宮内悠介,日産未来文庫編集部
発行:日産自動車 (2019.11.25)

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☆☆★★★

日産がSF作家などに依頼した自動運転がある未来についての短いお話が書かれている本です.著者が「日産未来文庫編集部」となっているのは,社内公募かなにかなのでしょうか.タイトルは魅力的ですが,それぞれのお話は玉石混交といった感じです.Kindle にて.

2020年1月15日水曜日

宇宙ビジネスの衝撃

題名:宇宙ビジネスの衝撃  21世紀の黄金をめぐる新時代のゴールドラッシュ
著者:大貫美鈴
発行:ダイヤモンド社(2018.5.11)

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☆☆☆☆★

宇宙関連産業についての網羅的に書かれている本です.積読(電子書籍の場合はなんというのでしょう)状態だったのを,やっと読みました.最近の宇宙産業の動きは速いので,この1,2年でも状況が変わっているところもありますが,これ一冊読んでおけば現状が把握できます.とくに資金関係のことが参考になりました.

290頁から宇宙エレベーターについても軽く触れていただいています.

Apple ブックにて.

2020年1月13日月曜日

量の測度【新装版】

題名:量の測度【新装版】
著者:アンリ・ルベーグ
訳者:柴垣和三雄
発行:みすず書房(2016.11.18)

SUR LA MESURE DES GRANDEURS
by Henri Lebesgue
1956

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☆☆☆★★

ルベーグ積分の創始者によって「量」についての数学と数学教育について書かれた本です.「数学教育のあり方への提言として示唆に富む数学史上の古典的著作」とのことですが,図がないことや,前置きなしに使われる術語など,読むのに骨が折れます.ちょっと古いが,量の概念について興味があるなら,読んでもいいかも.資料として.