題名:「誤差」「大間違い」「ウソ」を見分ける統計学
著者:デイヴィッド・サルツブルグ
訳者:竹内惠行,濵田悦生
発行:共立出版(2021.7.31)
Errors, Blunders, and Lies: How toTell the Difference
by David S. Sulsburg
2017
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☆☆★★★
統計学の考え方についてあまり数式を使わずに書かれている本です.具体的なトピックを扱うことで,統計学とはどのように数値を扱っているのかについて解説されています.タイトルにも使われている blunder を「大間違い」と訳しているのですが,間違いではないかもしれませんがちょっと引っかかります.「不注意による間違い」とか「ばかな間違い」のような訳が多いと思うのですが,どうなんでしょうか.このことと関係があるのかないのか,前半部分の翻訳がこなれていないため,とても読みにくく感じました.原著を読んでいないのではじめはもともと読みにくい文章なのかな,と思っていましたが,後半になると読み進めやすくなるので,そういうわけでもなさそうです.とにかく前半は,語尾に「のである」が多くて読みにくいのである.期待して読んだだけに,残念なのである.
また,意味のわからない記述もみられます.たとえば,17頁に「ビリヤード球についての(ガモフの原始物理学の世界でプランク定数と呼ばれる)不確実性の程度は、我々が通常見る対象物についての不確実性の数千倍も大きい」という記述は,何重にも意味がわかりません.25頁には「セレステ力学と呼ばれた」とありますが,日本語では聞いたことがありません.「天体力学」としておくほうがいいのではないかと思います.その後の文では「すべての観測値をかって?」と突然文章のスタイルの異なる問いかけがあり,とても不自然で読みにくく感じます.31頁には「ニュートンの運動の法則は速度(とそれに加えて加速度)か測定でき,特定の数値として表現できることを仮定している」とありますが,これもわかりません.
不親切と思われる部分もあります.たとえば,21頁に「偏差」が突然出てきますが,統計に不慣れな人に書かれた本としては不適当に感じられました.
29頁の「集号」は「集合」でしょうか.
38頁の「1964〜1985年」という部分には訳註として「原著では1963〜1985年と記されている」と訳出時に修正した旨のことが書かれていますが,グラフを見ると「1964〜1984年」のように見えます.そのグラフの横軸には,1965年と1970年の中間などに年号の入らない目盛線がつけられていて気になります.年毎のデータなので,その目盛線のところにデータは無いのですが.