2017年1月31日火曜日

教養としての認知科学

題名:教養としての認知科学
著者:鈴木宏昭
発行:東京大学出版会(2016.1.25)

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☆☆☆☆★

認知科学についてコンパクトにまとめられている本です.章末のブックガイドも適度で,認知科学ってなんだろうと思っている人が最初に手にとる本としてオススメです.認知科学はなぜ「認識」科学ではないか,という話は納得でした.

2017年1月30日月曜日

時計の社会史

題名:読みなおす日本史 時計の社会史
著者:角山榮
発行:吉川弘文館(2014.3.1)

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☆☆☆★★

機械時計の歴史について書かれている本です.知らないことがたくさん書かれていて,面白く読みました.

ただ,ヨーロッパ史の専門家とのことですが,不正確な記述が結構あります.たとえば,ホイヘンスを「時計師」と書いてあったりして,ちょっとびっくりしました(ホイヘンスの原理のホイヘンスさんはの数学や物理,天文の人です).重複が多いのも,気になります.

あと,「ナウい」とか「ヤング」とかが何度か出てきて,オイオイと思ったら,原本は1984年の中公新書だそうです.それにしても,流行語は使うものではない,と改めて自戒

2017年1月29日日曜日

洋服を着る近代 帝国の思惑と民族の選択

題名:洋服を着る近代 帝国の思惑と民族の選択
著者:ロバート・ロス
訳者:平田雅博
発行:法政大学出版局(2016.2.15)

CLOTHING: A Global History
by Robert Ross
2008

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☆☆☆★★

なぜ世界中の人々が同じような服を着るようになったのかについて書かれている本です.植民地や奴隷制などの研究者という著者らしく,詳細は書き込まれてるのですが,結論は読む前からだいたい想像できる通りで,ちっとばかしがっかりしました.まぁ,なんだかんだといってもそうなるよね,という感じ.

中で,日本の話も結構出てくるのですが,文献の引用が,たとえば井原西鶴が書いた文の場合,井原西鶴の文とその現代語訳が併記されていて,でも英語からの翻訳なので原文には現代語訳が併記されているはずもなく,なんだかねじれ感が面白い.内容とは関係ありませんが.

2017年1月28日土曜日

南極大陸完全旅行ガイド

題名:地球の歩き方 GEM STONE 066 南極大陸完全旅行ガイド
編集:「地球の歩き方」編集室
発行:ダイヤモンド・ビッグ社(2016.8.12)

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☆☆★★★

南極旅行のガイドブックです.署名には「南極大陸」とありますが,南極圏でのクルーズについての情報の方が多く書かれています(そりゃそうか).「完全旅行ガイド」というより,南極旅行ってこんな感じなんだ,ということがわかる本です.

独学の冒険

題名:独学の冒険 浪費する情報から知の発見へ
著者:礫川全次
発行:批評社(2015.10.31)

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☆★★★★

独学のすすめについて書かれている本です.主に文科系の分野での独学について書かれています.しかし,本のはじめに書かれている Q&A を読んだ時点で,読み進めるのをやめたくなりました.この本でいう「独学」がよくわかりません.勉強はひとりでするものですが,ひとりよがりではダメです.「独学」という響きが心地よいのかな.研究分野ごとの文化みたいなものもあるので,とっつきにくいのはわかるのですが...

オービタル・クラウド

題名:ハヤカワ文庫 オービタル・クラウド 上・下
著者:藤井太洋
発行:早川書房(2016.5.15)

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☆☆☆☆☆

テザー衛星を中心テーマとした SF です.やっと読みました(遅いですね,スミマセン).面白い.途中で解決法(ネタバレになるので書きませんよ)はわかってしまったのですが,それでも物語として面白くて,あっという間に終わりまで読んでしまいました.日本SF大賞,星雲賞日本長編部門受賞というのも納得です.iBooks にて

2017年1月26日木曜日

使って覚える記号図鑑 教科書に出てくる科学の記号・身近なマーク大集合!

題名:子供の科学★サイエンスブックス 使って覚える記号図鑑 教科書に出てくる科学の記号・身近なマーク大集合!
著者:白鳥敬
発行:誠文堂新光社(2016.12.16)

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☆☆☆☆★

小・中学校の教科書に出てくる記号や身近にある記号を開設している本です.忘れてたり,変わっていたりするので,大人も十分楽しめる本です.資料として.

人工知能の作り方 「おもしろい」ゲームAIはいかにして動くのか

題名:人工知能の作り方 「おもしろい」ゲームAIはいかにして動くのか
著者:三宅陽一郎
発行:技術評論社(2017.1.5)

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☆☆☆★★

ゲームの制作における人工知能の役割について書かれている本です.技術的な詳細が書かれているのではなく,概要がまとめられている感じです.この本を読んでも,人工知能は作れません.どういう読者を対象にして書かれているのか,イマイチわからない(表紙というかカバーを見ると,なんとなくわかるような気もしますが).あと,ゲームをしない人は紹介されているゲームの内容を知らないので,ついていけないかも(ええ,わたしのことですよ).

2017年1月24日火曜日

うるさい日本の私

題名:日経ビジネス人文庫 うるさい日本の私
著者:中島義道
発行:日本経済新聞出版社(2011.1.5)

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☆☆☆☆★

公共の場に流される意味のないお節介な放送に闘いを挑む哲学者のエッセイです.この方とは話が合いそう.東京駅の新幹線ホームとか,うるさくて気が狂いそうになる.やはり JR 東海は手強かったらしい.繰り返しが多い傾向がありますが,面白い.



2017年1月23日月曜日

醜い日本の私

題名:新潮文庫 醜い日本の私
著者:中島義道
発行:新潮社(2009.12.1)

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☆☆☆☆★



公共の場の醜さに闘いを挑む哲学者のエッセイです.この方とは話が合いそう.日本の街の統一感のなさについての考察に,納得しました.

2017年1月22日日曜日

頭の中は最強の実験室 学問の常識を揺るがした思考実験

題名:頭の中は最強の実験室 学問の常識を揺るがした思考実験
著者:榛葉豊
発行:化学同人(2012.8.10)

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☆☆☆★★

物理などの思考実験について書かれている本です.確率論など,これは思考実験なのか,といいたくなるものが入っているのは,まあいいとして,量子力学などの分野では書き込みが足りず,物足りません.版を重ねてるらしいのが不思議.

2017年1月17日火曜日

サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福

題名:サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福 上・下
著者:ユヴァル・ノア・ハラリ
訳者:柴田裕之
発行:河出書房新社(2016.9.30)

SAPIENCE: A Brief History of Humankind
by Yuval Noah Harare
2011

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☆☆☆☆★

たくさんのホミニンがいたのにもかかわらず,なぜホモ・サピエンスだけが繁栄したのかについて,歴史をたどりながら書かれている本です.上下2冊で分量が多いように感じますが「全史」と謳うのはちっと誇大.英語のタイトルにあるようにホモ・サピエンスの歴史を手短にまとめてあります(その分,著者の主張に合わなそうなとこは書かれていないように感じます).そういう見方もあるのだな,という読み方で楽しんでください.

2017年1月15日日曜日

破壊する創造者 ウイルスがヒトを進化させた

題名:ハヤカワ文庫 破壊する創造者 ウイルスがヒトを進化させた
著者:フランク・ライアン
訳者:夏目大
発行:早川書房(2014.12.15)

VIROLUTION
The Most Important Evolutionary Book Since Dawkins' Selfish Gene
by Frank Ryan
2009

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☆☆★★★

概ね,私たちはウイルスと共に進化してきたということが書かれている本です.内容は興味深いのですが,読みにくい.読み進めるのがとても疲れます.しかも,細かいことまでいろいろ書いているのに,肝心のことが,ズバリとは書かれていない.分量が多いだけに,読了後に徒労感.

次の大量絶滅を人類はどう超えるか

題名:次の大量絶滅を人類はどう超えるか 離散し,適応し,記憶せよ
著者:アナリー・ニューイッツ
訳者:熊井ひろ美
発行:インターシフト(2015.4.10)

SCATTER, ADAPT, AND REMEMBER
by Annalee Newize
2013

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☆☆★★★

人類は迫り来る大災害を生き延びることができるかについて書かれている本です.Amazon.com 年間ベストブックス(サイエンス部門)とのことなので期待したのですが,面白くなかった.不正確な記述が随所に見られます.たとえば,「レーダーによる海中の騒音公害」(電波は水の中にはほとんどはいりません.レーダーではなくソナーでしょう,きっと)とか.宇宙エレベーターも出てくるのですが,理解して書いているとは思えない内容でした.大量絶滅の例えとして,広島と長崎の原爆被害が挙げられているのは,かなりマズイ.

2017年1月13日金曜日

爆発の三つの欠片

題名:新☆ハヤカワ SFシリーズ 爆発の三つの欠片
著者:チャイナ・ミエヴィル
訳者:日暮雅通,嶋田洋一,市田泉
発行:早川書房(2016.12.15)

THREE MOMENTS OF AN EXPLOSION: STORIES
by China Mieveille
2015

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☆☆☆★★

ダークでシュールな(と広告には書いてある)お話が収められている短編集です.こういうお話を面白いと思う方がいるのはわかりますが,私には合わないなぁ.iBook にて




2017年1月10日火曜日

金持ちは,なぜ高いところに住むのか 近代都市はエレベーターが作った

題名:金持ちは,なぜ高いところに住むのか 近代都市はエレベーターが作った
著者:アンドレアス・ベルナルト
訳者:井上周平,井上みどり
発行:柏書房(2016.6.10)

Die Geschichte des Fahrstuhls
by Andreas Bernard
2006

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☆☆☆☆★

エレベーターの歴史について書かれている本です.原題は「エレベーターの歴史」で元は博士論文だそうです(タイトルは邦訳の方が魅力的ですね).エレベーターの歴史でよく書かれているオーティスの話が,じつはあとからつくられたものだった,など面白い話がたくさん載っています.

2017年1月8日日曜日

〆切本

題名:〆切本
編集:左右社編集部
発行:左右社(2016.9.20)

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☆☆☆★★

明治から現在までの書き手(描き手)たちによる〆切にまつわる文章や漫画を集めた本です.〆切を過ぎた原稿を抱えながら読む背徳感,というかお前もか感がたまりません.書き手(描き手)が手元に置いておいてはいけない本ですw

2017年1月6日金曜日

最古の文字なのか? 氷河期の洞窟に残された32の記号の謎を解く

題名:最古の文字なのか? 氷河期の洞窟に残された32の記号の謎を解く
著者:ジェネビーブ・ボン・ペッツィンガー
訳者:櫻井祐子
発行:文藝春秋(2016.11.10)

THE FIRST SIGNS
Unlocking The Mysteries of The World's Oldest Symbols
by Genevieve von Petzender
2016

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☆☆☆☆★

ヨーロッパ中の洞窟に残されている4万年前の壁画のうちの記号を世界で初めてデータベース化した著者による本です.記号は32種に分類され,時代や地理的な相関があるなど,とても面白い内容でした.文字や抽象的な思考の起源に興味がある方にオススメ.ただ残念なことに,内容が冗長な部分が散見されるので,星ひとつ減点.