2018年12月11日火曜日

Wonderful R 4 自然科学研究のためのR入門 再現可能なレポート執筆実践

題名:Wonderful R 4 自然科学研究のためのR入門 再現可能なレポート執筆実践
監修:石田基広
著者:江口哲史
発行:共立出版(2018.10.15)

--

☆☆☆★★

R と RStudio を使って実験ノートやレポートをまとめる方法が書かれいてる本です.題名に「自然科学研究のための」とついていますが,自然科学を網羅しているわけではなく,分析化学に特化しています.その意味で,期待はずれで,残念です.タイトル買いをするな,ということなのでしょうか.

2018年11月24日土曜日

アリエナクナイ科学ノ教科書 空想設定を読み解く31講

題名:アリエナクナイ科学ノ教科書 空想設定を読み解く31講
著者:くられ
発行:ソシム(2017.3.10)

--

☆☆☆★★

空想の世界で描かれる夢に科学からアプローチを試みる本です.以前話題になった『図解アリエナイ理科ノ教科書』の著者なので期待したのですが,出だしはともかく,全体としては期待したほどではありませんでした.

165ページに「平均分子量2のヘリウム」という,とてもファンタジックな記述があります.現実の科学からのアプローチならば,ヘリウムの分子量は4です.校正不足なのか直す気がないのか.読んだのは6刷なので,何処かで誰かが気づいていると思うのですが.後者だとすると,
残念です.

2018年11月21日水曜日

Wonderful R 3 再現可能性のすゝめ RStudioによるデータ解析とレポート作成

題名:Wonderful R 3 再現可能性のすゝめ RStudioによるデータ解析とレポート作成
監修:石田基広
著者:高橋康介
発行:共立出版(2018.5.15)

--

☆☆☆★★

統計ソフト R の統合開発環境 RStudio による再現可能なデータ解析とレポート作成について書かれいてる本です.そこそこ R を使える人を対象読者に想定して書かれているので,それなりの覚悟がいります.初心者はブッチちぎられます.もう少しチュートリアル的なものがあるとよかったかな.

2018年11月13日火曜日

探偵は教室にいない

題名:探偵は教室にいない
著者:川澄浩平
発行:東京創元社(2018.10.12)

--

☆☆☆☆★


中学生の日常で起きる事件(?)の謎解きのお話です.第二十八回鮎川哲也賞受賞作.この設定でどうミステリーにするのかな,と思って読み出しましたが,うーん,うまい.若干謎の設定や,明らかに伏線の仕込みだとわかる場面もありますが,それをいったら大抵のお話はそうなので,気にしないことにしましょう.札幌周辺が舞台なので,なじみ深い地名が出てくるのも楽しかった.受賞時の題名から変えて出版したのは,おそらくその辺りの狙いもあったのではないかと.iBooks にて.

2018年11月10日土曜日

新しい1キログラムの測り方 科学が進めば単位が変わる

題名:ブルーバックス 新しい1キログラムの測り方 科学が進めば単位が変わる
著者:臼田孝
発行:講談社(2018.4.20)

--

☆☆☆☆☆

質量の単位の改定を中心に単位と計量学について書かれている本です.来年(2019年)には質量の単位の定義が変わる予定です.130年間にわたって質量の単位をになってきた「国際キログラム原器」から,基礎ぶつりていすうであるアボガドロ「定」数とプランク定数を定義値として定め,そこから 1 kg を決めることになります.そのあたりの顛末やそうしなければならない理由などが,丁寧に書かれています.現代を生きる人の教養として,すべての人に勧めます.ぜひご一読を.

2018年10月28日日曜日

宇宙はどこまで行けるか ロケットエンジンの実力と未来

題名:中公新書 宇宙はどこまで行けるか ロケットエンジンの実力と未来
著者:小泉宏之
発行:中央公論新社(2018.9.25)

--

☆☆☆☆★

主にロケットについてとロケットで何ができるかについて書かれている本です.半ばほどまでは書き方がぎこちなく,いわゆる新書書き(という表現があるのかは知りませんが)でいまいち没頭できない感じでしたが,あとの方になるとこなれてきていい感じです.特に最後の章は(新書としては)ぶっ飛んでいて,好きです.物理的な説明は奔放で(というと高額の人たちに怒られそうですが),間違っていはいないが,厳密ではない,という書き方です.新書だからわかりやすさを優先したのかもしれません.

サブタイトルに「ロケットエンジンの実力と未来」とありますが,ロケットだけでなく,宇宙エベーターについても触れられています.90ページから94ページにわたって触れられていて,トレンドだからとりあえず触れときました,ではなく,割としっかり書かれています.最後の章の飛ばし方といい,もしかしてこちら側の人かな.

2018年10月19日金曜日

ベイズ統計学入門

題名:ベイズ統計学入門
著者:渡部洋
発行:福村出版(1999.9.20)

--

☆☆☆★★

ベイズ統計について書かれている本です.いわゆる教科書です.網羅的に書かれているので,ベイズ統計を使う人は手元に一冊あってもいいかも.とはいっても,この本ではなくてもいいかもです.

2018年9月29日土曜日

プロジェクト:シャーロック 年刊日本SF傑作選

題名:創元SF文庫 プロジェクト:シャーロック 年刊日本SF傑作選
編者:大森望,日下三蔵
発行:東京創元社(2018.6.29)

--

☆☆☆★★

2017年の日本SFが一望できるアンソロジーです.加藤元浩さんの「鉱区 A-11」という漫画に,宇宙エレベーター(軌道エレベーター)が登場します.ただ,「軌道エレベーターの最上階」の「高軌道ステーション」で無重力状態の描写は,残念です.宇宙エレベーターで無重力状態になるのは,静止軌道高度だけです.

宇宙旅行入門

題名:宇宙旅行入門
編者:高野忠,パトリック・コリンズ,日本宇宙旅行協会
発行:東京大学出版会(2018.7.20)

--

☆☆☆☆★

宇宙旅行にまつわるあれやこれやが書かれている本です.宇宙エレベーターについても触れられていて,拙著『宇宙エレベーターの物理学』も参考文献に挙げていただいています.宇宙旅行に行ってみたい人,宇宙旅行なんて無理でしょうと思っている人,など,宇宙旅行に,ポジティブにしろネガティブにしろ,興味がある方にオススメです.

2018年9月28日金曜日

とんでもない死に方の科学 もし●●したら,あなたはこう死ぬ

題名:とんでもない死に方の科学 もし●●したら,あなたはこう死ぬ
著者:コーディー・キャシディー,ポール・ドハティー
訳者:梶山あゆみ
発行:河出書房新社(2018.6.30)

And Then You're Dead
by Cody Cassidy & Paul Doherty
2017

--

☆☆☆★★

45種類の死に方のシナリオが思考実験的に書かれている本です.死に方のシナリオはふざけたものが多く,実際には起きない状況を想像しています.中にはネタ切れの苦し紛れのようなものもあり,思考実験の展開の無理矢理さと相まって,だんだん読み進むのが苦痛になっていきました.資料として.

167ページの「木製の磁場は太陽からの電磁波を電池のように蓄えている」との記述は誤りです.原文に当たっていないので,原著者か翻訳者のどちらの誤りかはわかりませんが,電磁波ではなくて,荷電粒子だと思います.

2018年9月27日木曜日

Wonderful R 2 Stan と R でベイズ統計モデリング

題名:Wonderful R 2 Stan と R でベイズ統計モデリング
監修:石田基広
著者:松浦健太郎
発行:共立出版(2016.10.25)

--

☆☆☆★★

フリーソフトの確率的プログラミング言語 Stan と統計処理ソフト R で,確率分布を使った数理モデルをデータにあてはめることで現象の理解と予測をする統計モデリングについて書かれている本です.あとがき(「おわりに」)にちょっとだけ書いてありますが,入門書と専門書の間をつなぐような立ち位置の本です.ベイズ統計や R のことをある程度知らないと理解が難しいと思います.記号類が事前の説明なしに使われていたり,索引から辿れなかったりするので,初心者には難しいかも.


2018年9月21日金曜日

圏論の歩き方

題名:圏論の歩き方
編者:圏論の歩き方委員会
発行:日本評論社(2015.9.15)

--

☆☆☆★★

矢印で考える数学「圏論」について,応用的な視点から書かれている本です.日本語はわかるのに内容がまったくわからなくて楽しい,という経験をするにはいい本です.物理系の話だけ,かろうじてつい行くことができましたが,数学のコトバがわからなすぎる.出直します.もっとも,圏論の入門書というわけではないし,著者たち自身も「わからない」と書いているので,そんなものなのかもしれません.

ちなみに,p198 に mol が表すのは個数,という記述がありますが,個数では量にならないので,個数に相当する量,ということになってます.細かいことですが.

2018年9月15日土曜日

感覚・知覚実験法

題名:講座 感覚・知覚の科学 5 感覚・知覚実験法
編者:岡嶋克典
発行:朝倉書店(2008.10.30)

--

☆☆☆★★

五感(視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚)の研究についての基礎知識と実験方法について書かれている本です.広い範囲の研究を含むので,当然著者は多いのですが,著者によって読みやすさが違いすぎます.仕方がないこととはいえ,もう少しなんとかならなかったのかな,と思います.資料として.

2018年9月12日水曜日

Wonderful R 1 Rで楽しむ統計

題名:Wonderful R 1 Rで楽しむ統計
監修:石田基広
著者:奥村晴彦
発行:共立出版(2016.9.15)

--

☆☆☆☆★

データ分析ツールの R を使って統計の基本を学ぶことができる本です.統計の基本,といっても,使い方の基本で,照明や導出は書かれていません.こういう場合のこういう統計量は,R のこういうコマンドで出てくるよ,ということが書かれている本です.もう少し R のコマンドについての説明があるとよかった.

2018年9月3日月曜日

はじめての統計データ分析 ベイズ的〈ポストp値時代〉の統計学

題名:はじめての統計データ分析 ベイズ的〈ポスト p 値時代〉の統計学
著者:豊田秀樹
発行:朝倉書店(2016.5.25)

--

☆☆☆☆★

有意性検定や p 値を使わないベイズ統計の入門書です.文系の学生を対象にしているようで,導出や証明はせず,統計量の使い方の説明に終始しています.ベイズ統計ではコンピューターのツールで計算するのですが,その辺りの記述があまりないのが残念です.最近は有意性検定や p 値を使った論文を認めないジャーナルが増えてきたので,ベイズ統計を勉強しなきゃ,という人が最初に手に取る本としてオススメです.

2018年8月30日木曜日

数字が明かす小説の秘密

題名:数字が明かす小説の秘密 スティーヴン・キング,J. K. ローリングからナボコフまで
著者:ベン・ブラット
訳者:坪野圭介
発行:DU BOOKS(2018.7.27)

Nabokov's Favorite Words is Mauve
by Ben Blatt
2017

--

☆☆☆★★

小説を構成するテキストを統計的にみると何がわかるかが書かれている本です.英語の小説が題材になっているので,日本語には当てはまらない話が多いようです.同じような本を日本語の小説を題材にして出してくれないかなぁ.

2018年8月29日水曜日

図説 英国メイドの日常

題名:ふくろうの本 図説 英国メイドの日常
著者:村上リコ
発行:河出書房新社(2011.4.20)

--

☆☆☆★★

題名の通り,英国メイドの日常が書かれている本です.資料として.

2018年8月28日火曜日

誤植読本(増補版)

題名:ちくま文庫 誤植読本(増補版)
編著:高橋輝次
発行:筑摩書房(2013.6.10)

--

☆☆☆★★

誤植や校正についての文章のあれやこれやをまとめた本です.本が好きな人や,文章を書く人は面白いかもしれませんが,一般受けするかなぁ,という感じです.それでも,もともと単行本として出されていたものを文庫化されているので,そこそこニーズはあるのだな,と感心しています.

2018年8月24日金曜日

志乃ちゃんは自分の名前が言えない

題名:志乃ちゃんは自分の名前が言えない
著者:押見修造
発行:太田出版 (2012.12.7)

--

☆☆☆★★

吃音の高校生が主人公のお話の漫画です.作者が吃音とのことで,吃音の描写は生々しい感じで,これを実写で映像化するのは大変だろうな,という感じです.ただ,吃音そのものの説明がもっとあってもよかったかな,と思います.世間的にはさまざまな誤解や理解不足なところがあるので.この漫画の内容では,どのあたりが誤解なのかがわかりにくいと思います.

2018年8月10日金曜日

図像の哲学 いかにイメージは意味をつくるか

題名:叢書・ウニベルシタス 図像の哲学 いかにイメージは意味をつくるか
著者:ゴットフリート・ベーム
訳者:塩川千夏,村井則夫
発行:法政大学出版局(2017.9.10)

Wie Bilder Sinn Boehm
by Gottfried Boehm
2007

--

☆☆★★★

図像について書かれている本です.いろいろなことが書かれている大作ではあるのでしょうが,図像とはなにか,がはっきりしないまま,しかも系統的ではなく論が進められていきます.哲学の本というのは,こういう感じなのでしょうか.苦手です.

101ページに「ガリレオがピサの斜塔で行なったとされる実験では,塔の上から同時に羽根と球体を落とすと,二つは同時に着地したという.両者が同じ速度で落下するというのは、観察とは矛盾する奇妙な主張である.」とあり,「ガリレオがなぜこのように明らかな不条理を主張し,その正当性を保持できたのか.」と疑問を提示した上で,それはガリレオが「『自由落下』という理論上の仮定」を思いついたからだ,という論を張っています.これはもう,なんだか何重にも過誤があってコメントする気にもならないひどい論です.まさかドイツでは,ガリレオは塔の上から羽根と球体を同時に落とし,二つは同時に着地した,と信じらているということはないですよね.しかもそう主張したのが「自由落下」を擁護するためとは.著者が間違えていたとしても,訳の段階で注などを入れて欲しかった.こんなのがあると,他の私の知らないところにもこのレベルのひどい論考があるのではないか,と心配になります.

資料として.

2018年8月8日水曜日

好き嫌い 行動科学最大の謎

題名:好き嫌い 行動科学最大の謎
著者:トム・ヴァンダービルト
訳者:桃井緑美子
発行:早川書房(2018.6.25)

YOU MAY ALSO LIKE
Taste in an Age of Endless Choice
by Tom Vanderbilt
2016

--

☆☆☆★★

人の好き嫌いについて書かれている本です.かなりしつこくかかれているので,好みが分かれそうです.力作ではあります.

2018年8月4日土曜日

イメージと意味の本 記号を読み解くトレーニングブック

題名:イメージと意味の本 記号を読み解くトレーニングブック
著者:ショーン・ホール
訳者:前田茂
発行:フィルムアート社(2013.9.30)

THIS MEANS THIS, THIS MEANS THAT
A User's Guide to Semiotics
by Sean Hall
2012

--

☆☆☆★★

記号についてさまざまな例をひきながら説いている本です.内容的には興味深いのですが,原文が悪いのか翻訳が悪いのか,とても読みにくい.レイアウトや字体の問題もありそうです.読みにくいので☆ひとつ減点.資料として.

2018年8月3日金曜日

すゞしろ日記 3

題名:すゞしろ日記 3
画者:山口晃
発行:羽鳥書店(2018.2.5)

--

☆☆☆☆★

東京大学出版会のPR誌『UP(ゆーぴー)』に連載されている「すゞしろ日記」などをまとめた本です.楽しいのですが,老眼のため細かいところが読みにくくなってきたため,星ひとつ減点(しどい...).あと,一気に読むと疲れます.便所本にオススメ(あ,私は決してそのような扱いはしておりません,念のため).

2018年7月29日日曜日

太陽系時代の終わり

題名:太陽系時代の終わり
著者:六角光汰
発行:文芸社(2017.8.20)

--

☆★★★★

かつて太陽系に繁栄していたと思われるオーバーテクノジーを人類が使おうとするお話です.最初の数ページで読むのをやめようかと思いました.なんとか読み進める(読み飛ばす)と,1/3くらいのところから少し面白くなりましたが,うーん,です.出版社が出版社なので,複数の目が入っていないのかも,と思いましたが,草思社・文芸社W出版賞第1回文芸社金賞とのことで,ふうん,という感じです.

2018年7月22日日曜日

見えない蝶をさがして

題名:見えない蝶をさがして
著者:いせひでこ
発行:平凡社(2018.5.23)

--

☆☆☆☆★

なんでしょう,絵本というか,絵と物語というか,絵と文字から構成されている本です.20の物語には直接の関係性はなく,作家の心に浮かんだものが乗せられているようです.ちなみに作家の「いせひでこ」さんは,私が好きな絵描きですが,なんかちょっと作風が変わったかな.

2018年7月21日土曜日

図説 英国執事 貴族をささえる執事の素顔

題名:ふくろうの本 図説 英国執事 貴族をささえる執事の素顔
著者:村上リコ
発行:河出書房新社(2012.6.30)

--

☆☆☆★★

英国執事について書かれている本です.日本の庶民には縁のない執事ですが,物語などではよく登場するので知ってるつもりになってるものの,いろいろ誤解もあるみたいです.そもそも,家令なのか執事なのが従者なのかが曖昧にとらえられているとのこと.ということは,正しく記述してもそのように取られない可能性があるわけで,なかなか悩ましい.資料として.

2018年7月20日金曜日

世界神話学入門

題名:講談社現代新書 世界神話学入門
著者:後藤明
発行:講談社(2017.12.20)

--

☆☆☆☆★

世界中の神話には共通点があって古いタイプの「ゴンドワナ型」と新しいタイプの「ローラシア型」に分けられ,これが人類移動のシナリオと合致することがわかってきた,ということについて書かれている本です.人類史や世界の神話について整理されていて,とても興味深いのですが,最後がちょっと強引に感じました.よく編集に削られなかったなぁ,という感じです(私の印象では,著者が一番いいたいことは編集者のお気に召さないことが多い,のですが,それって私だけ?).

神話の中に,宇宙エレベーターと解釈できなくもない記述があります.インドネシア・スラウェシ島のトラジャ族の神話とのことで,p251 に「はじめ,天と地の間は近く,神が縄に結んで食料を天空から降ろしていた」とあります.探せばもっとあるのかも.


2018年7月16日月曜日

軌道学園都市フロンテラ

題名:創元SF文庫 軌道学園都市フロンテラ 上・下
著者:ジョーン・スロンチェフスキ
訳者:金子浩
発行:東京創元社(2015.6.30)

THE HIGHEST FRONTIER
by Joan Slonczewski
2011

--

☆☆★★★

軌道上の宇宙居住施設での大学生のお話です.訳者あとがきによると,「生物学者である著者の本領が発揮されているハードSF」とのことですが,ハードかなぁこれ.好みはあるかと思いますが,ガジェットや独自の用語が多いのに説明が少なく,物語世界に入りにくいように感じました.ストーリーも単調で,意外なことは起きません.宇宙エレベーター(炭疽菌エレベーターって,何?)が出てくるというので読んでみましたが,私には合いませんでした.


音律と音階の科学 ドレミ…はどのように生まれたか (新装版)

題名:ブルーバックス 音律と音階の科学 ドレミ…はどのように生まれたか (新装版)
著者:小方厚
発行:講談社(2018.5.20)

--

☆☆☆☆★

音楽と楽器について数学と物理学の視点から書かれている本です.この本で,長年の疑問だった「ふたつの音の周波数をずらして行くと,どの辺りからうなりが2音に分かれて聞こえるのか」について書かれていて,なるほどでした.

ただ,120ページに「両端が閉じた菅の中の空気の振動」が描かれ,その後に「菅の場合は息を吹き込むことで(振動が)生じる」と書かれているのですが,両端が閉じた間には息は吹き込めないなぁ,と思っていたら,199ページに「これでは空気を吹き込むことができない」とあって,ずっこけました.わかってるなら書いといてよ,という感じです.

また,200ページには右側が閉じた閉管の図が描かれていて,199ページに「右側が吹き口である」と書かれているのですが,閉じている側からは息は吹き込めないので,吹き口は左側ではないかと思います(閉管楽器の例は,パンフルート).その前に,クラリネットのようなリード楽器はリードが閉じている間は閉管,という記述もあり,その説明のためかと思いますが,リードは空気の振動数と同じ振動数で震えているので,閉じているのではないと思いますが,どうなんでしょう.その直後にクラリネットのソノグラム(スペクトル)を載せて「存在しないはずの倍音成分の意外に大きい」とあるのですが,それは閉管とはいえないからですよね.

2018年7月8日日曜日

哲学の奇妙な書棚 パズル,パラドックス,なぞなぞ,へんてこ話

題名:哲学の奇妙な書棚 パズル,パラドックス,なぞなぞ,へんてこ話
著者:ロイ・ソレンセン
訳者:川辺治之
発行:共立出版(2018.4.25)

A CABUNET OF PHILOSOPHICAL CURIOSITIES: A Collection of Puzzle, Oddities, Riddles and Dilemmas
by Roy Sorensen
2016

--

☆☆★★★

「教室の外で見つかる興味深い論理」がたくさん書かれている本です.興味深い事柄も書かれているのですが,とても読みにくい.また,英語表現に特有の事柄や,文化的な背景が共有できていないとわからない事柄が多い印象です.読み流すタイプの本ではないようです.

2018年6月29日金曜日

どもる体

題名:シリーズ ケアをひらく どもる体
著者:伊藤亜紗
発行:医学書院(2018.6.1)

--

☆☆☆☆★

吃音がある著者によって書かれた吃音についての本です.さまざまな吃音がどのように感じられるかが観察とインタビューで語られています.吃音というのはどんな感じなのか,がわかります.資料として.

文中に出てくる「90度逆の方向に」という表現はなんとかしたほうがいいと思います.


安楽死を遂げるまで

題名:安楽死を遂げるまで
著者:宮下洋一
発行:小学館 (2017.12.18)

--

☆☆☆☆☆

自殺幇助,安楽死,尊厳死について書かれているノンフィクションです.資料のつもりで入手したのですが,読み始めたら止まらなくなりました.内容的には重いのですが,淡々と語られていて,でもところどころに著者の感情が挟まっていて,いろいろ考えされられました(そこそこ知っている地域や職場のこととも関連があったことも関係しているかもしれませんが).死に方を考えることは生き方を考えること,というわけで,みなさんにオススメです.Kindle にて.

2018年6月24日日曜日

知ってるつもり 無知の科学

題名:知ってるつもり 無知の科学
著者:スティーブン・スローマン,フィリップ・ファーンバック
訳者:土方奈美
発行:早川書房(2018.4.15)

THE KNOWLEDGE ILLUSION Why We Never Think Alone
by Steven Sloman, Philip Fernbach
2017

--

☆☆☆★★

無知と知識の錯覚と知識のコミュニケーションについて書かれている本です.はじめの3,4章とおわりの1,2章は面白かった.残りは読み進めるのが大変なうえに,読まなくてもいいかも,という内容でした.なんだろう,彼我の文化の違いなのかな.とても読みにくかった.でもまあ,はじめとおわりが面白かったので,よし.


数学ガール ポアンカレ予想

題名:数学ガール ポアンカレ予想
著者:結城浩
発行:SBクリエイティブ(2018.4.23)

☆☆☆☆★

--

数学好きの高校生「僕」と数学好きの女の子たちとのやりとりで,位相幾何学(トポロジー)などについて書かれている本です.幾何学のためか,これまでの「乱択アルゴリズム」や「ガロア理論」などに比べて読み進めやすい印象でした.ただ,やむを得ないのかもしれませんが,最後のリッチフロー方程式のくだりはちと物足りないかも.位相幾何学ってなに,という方にオススメ.

2018年6月22日金曜日

理科系の読書術 インプットからアウトプットまでの28のヒント

題名:中公新書 理科系の読書術 インプットからアウトプットまでの28のヒント
著者:鎌田浩毅
発行:中央公論新社(2018.3.25)

--

☆☆☆★★

火山学の研究者によって書かれた合理的な読書術についての本です.本を読むのが苦手な人に書いた,と書かれているので,本をよく読む人にとっては自明のことが書かれています.ていうか,本を読むのが苦手な人がこの本を読み切ることができるのか,とちょっと心配になります.この本を読むことができるなら,十分本を読むことができるのではないかと…….資料として.

2018年6月15日金曜日

1から学ぶ大人の数学教室 円周率から微積分まで

題名:1から学ぶ大人の数学教室 円周率から微積分まで
著者:ジェイソン・ウィルクス
訳者:冨永星
発行:早川書房(2018.2.25)

BURN MATH CLASS And Reinvent Mathematics for Yourself
by Jason Wilkes
2016

--

☆☆☆★★

自力で数学をつくっていくプロセスが書かれている本です.円周率や微分積分を足し算と掛け算から導入して展開していきます.野心的な本で興味深いのですが,読みにくい.著者の好みなのだろうと思うのですが,記述がクドくて読み進むのが辛くなります.彼我の文化の違いでしょうか.私の文章もどちらかというとクドいほうなので,反省しました(その意味ではおおいに参考になりました).多少数学を知っているなら,この話をどうやって落とすのだろうと,ちょっとメタな視点から読むのがオススメです.がんばって最後まで読むと,著者が破れかぶれになっていて楽しめます.

2018年5月30日水曜日

アルテミス

題名:ハヤカワ文庫SF アルテミス 〈上,下〉
著者:アンディ・ウィアー
訳者:小野田和子
発行:早川書房 (2018.1.24)

--

☆☆☆☆★

月面都市アルテミスでのミッション・インポッシブルを描いたSFです.著者は『火星の人』を書いた方なので期待して読み出しましたが,期待が大きすぎたかも.語り口は軽く,読みやすいのは相変わらずでとてもいいのですが,内容がいまいち.というか,面白いのですが期待が大きすぎて…… 楽しい映画にはなりそうですね.

2018年5月19日土曜日

虚談

題名:虚談
著者:京極夏彦
発行:KADOKAWA(2018.2.28)

--

☆☆★★★

現実と虚構をめぐる短編9篇の連作集です.残念なことに,最初の1篇を読んだところで読み進める意欲を失いました.反面教師に授業料を払ったと思うことにします.

2018年5月18日金曜日

屍人荘の殺人

題名:屍人荘の殺人
著者:今村昌弘
発行:東京創元社 (2017.10.13)

--

☆☆☆★★

第27回鮎川哲也賞受賞作のミステリーです.「デビュー作にして前代未聞の3冠!/『このミステリーがすごい!2018年版』第1位/『週刊文春』ミステリーベスト第1位/『2018本格ミステリ・ベスト10』第1位」とのことで,期待して読み始めましたが,これは意見が分かれそう.文章はうまいし,展開もいいのだが,肝心(に思える)ところがそれでいいのか,という感じ.まあでも,面白いことは請け合います.iBooks にて


2018年5月6日日曜日

レッド・マーズ,グリーン・マーズ,ブルー・マーズ

題名:創元SF文庫 レッド・マーズ〈上,下〉,グリーン・マーズ〈上,下〉,ブルー・マーズ〈上,下〉
著者:キム・スタンリー・ロビンスン
発行:東京創元社(1998.8.28,2001,12,21,2017,4,21)

RED MARS, GREEN MARS, BLUE MARS
 by Kim Stanley Robinson
1993, 1994, 1996 

--

☆☆☆☆★

人類が火星に移り住む様子について語られている SF です.長い.各巻 500 ページほど,『ブルー・マーズ』に至っては 600 ページ超えです.そして,3 部作のそれぞれが出る間隔も長い.シリーズ最終作の『ブルー・マーズ』が出たのは,最初の『レッド・マーズ』が出てから 20 年,2 作目の『グリーン・マーズ』が出てから 16 年経ってからです.これだけ間があいてもきっちりシリーズを完結させてくる東京創元社には敬意を払いますが,『レッド・マーズ』『グリーン・マーズ』がどんなお話だったのかは忘れてます.もう一度最初から読み直しましたよ.面白いのですが,一気に読むとさすがに疲れます.そして残念ながら,良い長編を読んでいて残りのページ数が少なくなってきたとに感じる「ああ,終わってほしくない」という感覚は得られませんでした.長すぎかも.ところどころ,物理的に木になる記述があることも含めて,星ひとつ減点.

火星に宇宙エレベーターがつくられ,落とされ,またつくられます.宇宙エレベーターの記述についてはいろいろいいたいこともありますが,書かれた時代を考えるとこんなものかなと.

2018年5月1日火曜日

「方言コスプレ」の時代 ニセ関西弁から龍馬語まで

題名:「方言コスプレ」の時代 ニセ関西弁から龍馬語まで
著者:田中ゆかり
発行:岩波書店(2011.9.29)

--

☆☆☆★★

小説やマンガ,TVドラマなどの創作物で使われる方言もどき「方言コスプレ」について書かれている本です.意識調査とコンテンツ分析で方言の価値の変遷を追っていく書き方ですが,全体的に論文調で,あまり面白くありません.データや根拠は出典などを記すだけにしてもよかったのでは.題名が魅力的なだけに残念です.

2018年4月30日月曜日

国境 奪い合いの世界地図

題名:Kawade夢文庫 国境 奪い合いの世界地図
編者:歴史の謎を探る会
発行:河出書房新社(2013.8.1)

--

☆☆☆☆★

世界の国境にまつわるあれこれが書かれている本です.日本の領土に関わることを含め,世界中の変な国境や飛地についてのトピックが並んでいて,面白く読み進めることができます.内容とは関係ないのですが,あとがき風であとがきではない終わり方が不自然で,何があったのだろうと邪推してしまいます.

2018年4月24日火曜日

微妙におかしな日本語 ことばの結びつきの正解・不正解

題名:微妙におかしな日本語 ことばの結びつきの正解・不正解
著者:神永曉
発行:草思社(2018.2.21)

--

☆☆☆☆★

長く辞書の編纂に関わってきた著者による言葉の結びつきについての本です.取り上げられている言葉には考えさせられるものや気がついていなかったものがあり,興味深いのですが,全体的に単調で読み進めるのが辛くなるのが残念です.