2021年9月27日月曜日

基礎から学ぶJulia


題名:基礎から学ぶJulia ~基本文法からデータサイエンスまで~

著者,石井一夫

発行:(株)エスシーシー(SCC)


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☆☆☆★★


プログラミング言語 Julia の基本的な使い方などが書かれている本です.「はじめに」には「基本的にプログラミング言語の使用経験ない人を想定して書かれています」とありますが,初めのうちこそそんな感じで進むものの,間に受けていると途中から急に難しく感じられるかもしれません.また,構成不足で誤字やコードのミスなども目立ちらます.さらに,後述される内容が断りなく出てくるなど,構成上の問題も見受けられます.とはいえ,現状では初心者向きの本だと思います.資料として.

2021年9月24日金曜日

1 から始める Juliaプログラミング


題名:1 から始める Juliaプログラミング Learn Julia Programming from Scratch

著者:進藤裕之,佐藤建太

発行:コロナ社(2020.4.17)


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☆☆☆★★


プログラミング言語 Julia の基本的な使い方などが書かれている本です.Julia については「1から」書かれていますが,プログラミングについての知識やスキルはある程度あることが前提に書かれています.まったくのプログラミング初心者が頼りにするのは難しいと思います.タイトルだけ見ると誤解しそうなので,注意が必要です.あと,表紙の「1」が目を引くので,シリーズ本のような印象を受けますが,おそらく単発です.資料として.

戦争の物理学


題名:戦争の物理学

著者:バリー・パーカー

訳者:藤原多伽夫

発行:白揚社(2016.3.25)


The Physics of War: From Arrows to Atoms

by Barry Parker

2014


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☆☆★★★


兵器の変遷について書かれている本です.タイトルは『戦争の物理学』ですが,物理については期待外れです.「物理学」と名打つのなら,物理の説明はもっときちんとすべき,と感じます.たとえば,40頁の「慣性に打ち勝とうとすれば力が必要で」という説明や,210頁の衝撃波を説明する図,212頁の弾道の図の放物線,232頁の「期待を前進させるには,推力が抗力を上回らなければならない」という記述,273頁の図中の振幅の説明,293頁の「ジャイロ効果」の説明,324頁の「このときロケットには,自重による下方向への重力と,発射台からの反作用の力がかかっている」という記述,378頁の「核融合は重い元素では起きず,非常に軽い元素でのみ起きる」という記述など,それはまずいでしょ,という説明が多く見受けられます.歴史的な事柄に関しては詳しく書かれているのですが,そちらの信憑性まで疑わしく感じられてしまい,残念です.

また翻訳に関して,原著を確認していないので確定的なことはいえませんが,47頁の「螺旋状の回転翼」の「回転翼」はおそらく “rotor” で,飛行機の話ではなく,回転による送り機構のことなので,訳としては「螺旋状の回転子」ではないかと思います.284頁のマグネトロンを説明する図中に「回転する電子雲」とありますが,「電子雲」というと原子核を取り巻く電子の描像のことになるので,ここでは「電子群」のような言い方のほうがいいかと思います.

2021年9月17日金曜日

ゼロからわかる宇宙防衛


題名:ゼロからわかる宇宙防衛 宇宙開発とミリタリーの深〜い関係

著者:大貫剛

発行:イカロス出版(2019.7.30)


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☆☆☆★★


宇宙開発についてミリタリーの視点から書かれている本です.月間『Jウイング』の連載「ミリタリーマニアのための宇宙開発講座」をまとめたものです.とても読みやすく,わかりやすい本です.資料として.

21頁の「Aft」のAは小文字ですね.校正漏れでしょうか.

2021年9月16日木曜日

科学は歴史をどう変えてきたか

題名:科学は歴史をどう変えてきたか

著者:マイケル・モーズリー,ジョン・リンチ

訳者:久芳清彦

発行:東京書籍(2011.8.22)


THE STORY OF SCIENCE / Power, proof and passion

by Michael Mosley, John Lynch

2010


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☆☆☆★★


古代から現代までの科学の発見とそれに伴う世界の変化について書かれている本です.BBCのテレビシリーズの書籍版のようです.全編色刷りで図版が多いのですが,写真などの背景の上に文字が配置されていることがあり,読みにくいのが残念です.それにしても,最後のページの「注記」は笑えます.教科書も出している出版社なんだから,そこはなんとかして直そうよ,という感じです.資料として.

47頁にニュートンの運動法則の第1法則として「外からの力が加わらない限り,物体は静止または運動状態を維持する」のあとに「例えば,回転しているボールは摩擦の影響がなければ,回転し続ける」とありますが,「例えば」以降は誤りです.原著ではどう書かれているのかな.

75頁に「ヒンデンブルグ号の惨事」として「しかし,あの激しい炎上の仕方は、満載された水素ガスの可燃性の高さを再認識させるものだった」とありますが,あれは気嚢に塗られた塗料のテルミット反応だったと思うのですが.たしかに「再認識させるもの」ではあったわけですが,どうなのでしょうか.

2021年9月14日火曜日

神経美学


題名:共立スマートセレクション 30 神経美学 美と芸術の脳科学

著者:石津智大

発行:共立出版(2019.8.30)


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☆☆☆★★


神経美学について書かれている本です.といっても,神経美学なんて,耳にしたことありませんよね.神経美学(neuroaesthetics)とは,認知神経科学の一分野で,脳機能イメージングを使うなどして,脳の働きと美学的経験との関係や,脳の機能と芸術的活動との関係を研究する学問分野,とのことです.前半は脳機能イメージングの結果などから実験的にいえることなどが紹介されていますが,後半を過ぎると次第に仮説の話が増えていきます.まだ新しい学問分野とのことなので,今後に期待です.

2021年9月13日月曜日

物語創世

題名:物語創世 聖書から〈ハリー・ポッター〉まで,文学の偉大なる力


著者:マーティン・プフナー

訳者:塩原通緒,田沢恭子

発行:早川書房(2019.6.25)


THE WRITTEN WORLD / The Power of Stories to Shape People, History, Civilization

By Martin Puchner

2017


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☆☆☆☆☆


「書かれたもの」の歴史について書かれている本です.網羅的ではありませんが,世界各地に取材した広範な内容が含まれています.「世界史上最初の小説」として「源氏物語」が登場しますが、よく調べてあって驚きました.というより、知らないことがいっぱいでした.後半は軽めになりますが,前半は圧巻です.勉強になるだけでなく,いろいろなことを考えさせられる本です.

2021年9月11日土曜日

統計学のための数学入門30講


題名:科学のことばとしての数学 統計学のための数学入門30講

著者:永田靖

発行:朝倉書店(2005.3.25)


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☆☆★★★


統計学を勉強するために必要な数学の入門書として書かれた本です.「まえがき」によると「ていねいな説明が必要」という目的を持って書かれたとのことですが,「大学初年時の微積分や線形代数の教科書の1冊や2冊は手元に持っている」人を対象読者としていると書かれている通り,入門書としては記述が通り一遍です.既に統計のことを知っている人向きで,この本だけで統計学とそれに関する数学が理解するのは難しいと思います.また,朝倉書店の「数学30講シリーズ」をヒントにしてタイトルをつけた,とのことですが,ヒントというよりそのままですね.もう一工夫欲しいところです.資料として.


2021年9月7日火曜日

人類と気候の10万年史


題名:ブルーバックス 人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか

著者:中川毅

発行:講談社(2017.2.20)


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☆☆☆☆☆


7万年分の年縞堆積物から見える気候と人類史の関わりについて書かれている本です.気候変動というときの「変動」について,考えさせられました.丁寧ではあるが専門的にはなりすぎず,読みやすくはあるが手を抜かない,という感じです.過去の気候をどうやって調べるのかを知りたい人にもオススメです.

2021年9月6日月曜日

水鏡推理


題名:講談社文庫 水鏡推理 

著者:松岡圭祐

発行:講談社(2016.11.1)


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☆☆☆☆☆


文部科学省の「研究における不正行為・研究費の不正使用に関するタスクフォース」に配属された一般職を主人公としたミステリーです.ミステリーといっても,陽に殺人は起きません(なぜ「陽に」などという表現をしたのかは,読んでいただけるとわかります).研究不正の方法などについていいたいこともありますが,エンターテインメントとして,とても楽しく読みました.Apple Book にて.

中盤で宇宙エレベーターが登場します.SFではないので,もちろん本物(?)の宇宙エレベーターではありません.微妙な立ち位置での登場ではありますが,扱いは誠実です.宇宙エレベーターの現状をよく調べた上で書かれているように感じました.

科学技術の現代史


題名:中公新書 科学技術の現代史 システム、リスク、イノベーション

著者:佐藤靖

発行:中央公論新社(2019.6.25)


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☆☆☆★★


第2次世界大戦後の「科学技術」の歴史について書かれている本です.言葉遣いが無頓着ではないかな,と思うところがままありますが,簡潔にまとまっている印象です.資料として.

2021年9月3日金曜日

地球・惑星・生命


題名:地球・惑星・生命

編集:日本地球惑星科学連合

発行:東京大学出版会(2020.5.22)


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☆☆☆☆★


日本地球惑星科学連合の30周年記念出版として,ニュースレター誌で取り上げられた話題を書き下ろしたものが集められた本です.タイトルから想像できる地球惑星科学の各分野から,科学コミュニケーションや「ブラタモリ」まで,広範な話題が取り上げられています.とても読みやすい著者と,とても読みにくい著者がいますが,著者の顔写真まで載っているので,なかなか思い切った企画だと思います.各文章の末尾に「一般向けの関連書籍」が一冊だけ載っているのも面白い.

2021年9月1日水曜日

ハウ・トゥー バカバカしくて役に立たない暮らしの科学


題名:ハウ・トゥー バカバカしくて役に立たない暮らしの科学

著者:ランドール・マンロー

訳者:吉田三知世

発行:早川書房(2020.1.25)


HOW TO / Absurd Scientific Advice for Common Real-World Problems

by Randall Munroe

2019


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☆☆☆★★


日常的な課題を解決するための科学的な方法について書かれた本です.科学的ではあるが,現実的ではない話ばかりです.棒人間の漫画も含めて,著者による世界に浸ることができる人にとっては,楽しい本だと思います.本書ではテーマによって掘りの深さがずいぶん異なるのが気にはなるものの,読み応えありです.

199頁の斜面に置かれた物体に働く力についての図は,摩擦力が重力の斜面方向成分より大きくなっているのが気になりました.そんなはずはありませんよね.

248頁と356 頁に宇宙エレベーターについての記述があります.もっとも,248頁には「宇宙エレベーター」とは書かれてはいませんが.


宇宙岩石入門 起源・観測・サンプルリターン


題名:宇宙岩石入門 起源・観測・サンプルリターン

著者:牧嶋昭夫

発行:朝倉書店(2020.7.1)


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☆☆☆☆★


宇宙からやってきた石についてや宇宙にある石を取ってくることについて書かれている本です.タイトルは「宇宙岩石入門」となっていますが,岩石だけではなく,宇宙や太陽系,地球の歴史から解きほぐされていて,これ一冊で広範な知識を得ることができます.また,宇宙探査についても書かれていて,守備範囲の広い本です.その分,岩石についての記述がざっくりしているのが残念ですが,致し方ないのでしょうね.

81頁の最後の段落は,唐突な感じです.改稿しているうちに移動を忘れてしまったかのようです.

125頁に「ハヤブサ」とありますが,探査機の名称なのでひらがなですね.他にも何か所も出てきているのになぜかここでけカタカナになっています.