2020年6月24日水曜日

交響曲第6番「炭素物語」

題名:交響曲第6番「炭素物語」 地球と生命の進化を導く元素
著者:ロバート・M・ヘイゼン
訳者:渡辺正
発行:化学同人(2020.5.10)

Symphony in C
Carbon and the Evolution of (Almost) Everything
Robert  M. Hazen
2019

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☆☆☆☆★

「炭素がつむいだ地球と生命の物語」について書かれた本です.著者は交響楽団のトランペット奏者でもあるとのことで,原著も交響曲をイメージした題名になっていますが,その意図を酌みつつ無理なく日本語の題名にしてあるあたり,さすがです(と思ったら,訳者は渡辺センセではありませんか.タイトルにどこまで関与したのかはわかりませんが,宜なるかな).内容的には,カール・セーガン『コスモス』の炭素限定版,といった感じで,とても楽しめました.ただ個人的には,文中に QR コードが入ってくるのが気になります.これも意図はわかるのですが,調べたいなと思う人は自分で調べるだろうし,そうでない人は QR コードを読むこともしないと思うのですが.

66ページに「結晶を通ったX線は散乱され,特別な方向で強まる(回折現象)」とありますが,回折干渉現象とした方がいいと思います(原著を確かめたわけではありませんが).

それから,154ページの「横に突き出た趣のパイプから」の「趣」がわからなかったのですが,どういう意味でしょうか(これもおそらく原著を調べればわかることだと思いますが
).

164ページに宇宙エレベーターについての言及もあります.表現はやや微妙ではありますが.

2020年6月14日日曜日

大学数学ことはじめ 新入生のために

題名:大学数学ことはじめ 新入生のために
編者:東京大学数学部会
著者:松尾厚
発行:東京大学出版会(2019.4.12)

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☆☆★★★

大学の初年級で習う数学の内容をまとめた本です.教科書ではなく資料集的に使われることが想定されていて,微分積分,線型代数の基礎や,述語論理,集合と写像など,一通り網羅されています.高校と大学の用語などの違いや,英語表記などもされています.資料として

2020年6月13日土曜日

大学で学ぶゾンビ学 ~人はなぜゾンビに惹かれるのか~

題名:扶桑社新書 大学で学ぶゾンビ学 ~人はなぜゾンビに惹かれるのか~
著者:岡本健
発行:扶桑社(2020.4.13)

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☆☆★★★

ある大学の「現代文化論」と別の大学の「メディア社会学」という講義で教科書として使われている本,だそうです.大学で「ゾンビ学」とい授業をしているわけではない,ということがわかるのは「おわりに」まで読んでからで,なんかがっかり,というか,「学」というには,考察が足りないように思いながら読み進めたので,まあそうだろうな,という感じです.ゾンビについて一通り知りたい,という方にはオススメ.

2020年6月12日金曜日

聖者のかけら

題名:聖者のかけら
著者:川添愛
発行:新潮社(2019.10.30)

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☆☆☆★★

中世のヨーロッパを舞台とした歴史ミステリーです.言語学や情報科学をテーマにした本を書いている著者なので,これもそんな感じかと思って開いたら,縦書きなので驚きました.読み応えがあり,背景情報もしっかりしているのだと思います.最後の方の重要な場面で,あれ?,となるのが残念(ネタバレになるのでかけませんが).

2020年6月7日日曜日

動物に「心」は必要か 擬人主義に立ち向かう

題名:動物に「心」は必要か 擬人主義に立ち向かう
著者:渡辺茂
発行:東京大学出版会(2019.12.25)

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☆☆☆★★

動物行動の研究方法としての擬人主義について書かれている本です.題名からはもっと広い意味の心について書かれている印象だったので,やや肩透かしを受けた感ありです.中身を見ていないジャケ買いなので仕方がないことではありますが,装丁もそれっぽいので完全に騙されました.最後の章「自著解題」から読まれることをお勧めします.著者の意図がはっきりします.