2021年8月29日日曜日

メイカーとスタートアップのための量産入門


題名:メイカーとスタートアップのための量産入門 200万円,1500個からはじめる少量生産のすべて

著者:小美濃芳喜

発行:オライリー・ジャパン(2019.8.8)


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☆☆☆☆★


趣味のものづくりをしている人たちを念頭に,量産化や商品化についてのノウハウや手順について書かれている本です.実践的な内容が書かれているので,初心者というか,未経験者でも参考になるのではないかと感じられました.量産化にも商品化にも興味はありませんが,ものづくりの現場を垣間見ることができて,勉強になりました.資料として.

2021年8月28日土曜日

妄想する頭 思考する手


題名:妄想する頭 思考する手 想像を超えるアイデアのつくり方

著者:暦本純一

発行:祥伝社(2021.2.10)


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☆☆☆★★


思考の方法や発想のコツなどについて書かれている本です.参考になる人もいるとは思いますが,とくに目新しいと感じることは書かれていませんでした.内容としては共感できる本です.

163頁に「(略)『イナーシャ』と呼んでいる.『慣性モーメント』を意味する言葉だ」との記述がありますが,「慣性」を意味する言葉ですね.

「科学的」は武器になる 世界を生き抜くための思考法


題名:「科学的」は武器になる 世界を生き抜くための思考法

著者:早野龍五

発行:新潮社(2021.2.21)


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☆☆☆☆★


「社会の中での科学者」という生き方について書かれている本です.タイトルには「思考法」とありますが,思考法の解説というより自伝を語る中で思考法に触れていく,というスタイルで書かれています.文体も平易で読みやすいので,科学者ってなにを考えてるのかな,ということが気になる方にオススメです.

2021年8月27日金曜日

「誤差」「大間違い」「ウソ」を見分ける統計学


題名:「誤差」「大間違い」「ウソ」を見分ける統計学

著者:デイヴィッド・サルツブルグ

訳者:竹内惠行,濵田悦生

発行:共立出版(2021.7.31)


Errors, Blunders, and Lies: How toTell the Difference

by David S. Sulsburg

2017


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☆☆★★★


統計学の考え方についてあまり数式を使わずに書かれている本です.具体的なトピックを扱うことで,統計学とはどのように数値を扱っているのかについて解説されています.タイトルにも使われている blunder を「大間違い」と訳しているのですが,間違いではないかもしれませんがちょっと引っかかります.「不注意による間違い」とか「ばかな間違い」のような訳が多いと思うのですが,どうなんでしょうか.このことと関係があるのかないのか,前半部分の翻訳がこなれていないため,とても読みにくく感じました.原著を読んでいないのではじめはもともと読みにくい文章なのかな,と思っていましたが,後半になると読み進めやすくなるので,そういうわけでもなさそうです.とにかく前半は,語尾に「のである」が多くて読みにくいのである.期待して読んだだけに,残念なのである.

また,意味のわからない記述もみられます.たとえば,17頁に「ビリヤード球についての(ガモフの原始物理学の世界でプランク定数と呼ばれる)不確実性の程度は、我々が通常見る対象物についての不確実性の数千倍も大きい」という記述は,何重にも意味がわかりません.25頁には「セレステ力学と呼ばれた」とありますが,日本語では聞いたことがありません.「天体力学」としておくほうがいいのではないかと思います.その後の文では「すべての観測値をかって?」と突然文章のスタイルの異なる問いかけがあり,とても不自然で読みにくく感じます.31頁には「ニュートンの運動の法則は速度(とそれに加えて加速度)か測定でき,特定の数値として表現できることを仮定している」とありますが,これもわかりません.

不親切と思われる部分もあります.たとえば,21頁に「偏差」が突然出てきますが,統計に不慣れな人に書かれた本としては不適当に感じられました.

29頁の「集号」は「集合」でしょうか.

38頁の「1964〜1985年」という部分には訳註として「原著では1963〜1985年と記されている」と訳出時に修正した旨のことが書かれていますが,グラフを見ると「1964〜1984年」のように見えます.そのグラフの横軸には,1965年と1970年の中間などに年号の入らない目盛線がつけられていて気になります.年毎のデータなので,その目盛線のところにデータは無いのですが.

2021年8月26日木曜日

数とは何か そしてまた何であったか

題名:数とは何か そしてまた何であったか

著者:足立恒雄

発行:共立出版(2011.6.25)


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☆☆☆☆★


数概念の通史について書かれている本です.数とは何か,について,基本的には時系列に紹介されています.本文中では「数体系の進化史を模索するのが目的」と書かれています.丁寧にわかりやすす書かれているので,数学における数について興味がある人の入り口としてオススメです.資料として.

91頁下から3行目「公理だとう」→「公理だという」「い」が脱字でしょうか.

2021年8月25日水曜日

日本語表現力 アカデミックライティングのための基礎トレーニング


題名:日本語表現力 アカデミックライティングのための基礎トレーニング

編著:石塚正英,黒木朋興

発行:朝倉書店(2016.3.25)


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☆☆★★★


コミュニケーション力や問題解決力を日本語表現の土台において身につけるための教科書,という触れ込みの本です.が,これを読んでも,著者がいうような「きちんとした文章」が描けるようになるとは思えません.サブタイトルに「アカデミックライティングのための基礎トレーニング」とありますが,それを期待して読むと肩透かしをくらいます.そもそも序論が強引で,読むのをやめようかと思ったくらいでした.その割に序論の最後では言い訳のようなことが書かれていて,内情を垣間見た思いです.本文は3部構成になっていて,第1部はアカデミックライティングについての概要説明のようになっています.その中で「全体の構成」を「イントロ・本論・結論」と説明されていて,なぜ序論ではなくイントロダクションでもなく,イントロなのか,気になってしまい,やはり読むのをやめようかと思ってしまいました.第2部と第3部は「アカデミックライティングの基礎知識」「アカデミックライティングの実践」というタイトルでなければ面白いトピックが並んでいるのに,無理矢理な構成のために残念な本になっているようです.

2021年8月17日火曜日

言語学バーリ・トゥード Round 1 AIは「絶対に押すなよ」を理解できるか


題名:言語学バーリ・トゥード Round 1 AIは「絶対に押すなよ」を理解できるか

著者:川添愛

発行:東京大学出版会(2021.7.21)


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☆☆☆☆★


東京大学出版会のPR誌「UP」に連載されていたものに書き下ろしを加えたエッセイ集です.これまでの著者のスタイルと随分違って,「STO先生」の雑文のようだなぁ,と思って読んでいたら,本文や「あとがき」に理由のようなものが書かれていました.ある程度はそれで納得がいったのですが,それでも読んだ印象は,最初の6篇までとその後ではかなり異なります.はじめのうちは,言葉の粒度というか,織り目が詰まっている感じで,長く読み続けることができませんでしたが,あとになると軽く読み進めることができるようになります.次第に著者なりのスタイルというか,リズムができてきたのかな,という感じです.はじめの数篇だけ目を通して読むのをやめた方は,諦めずにもう少し読み進めることをお勧めします.

170頁に「米を洗う」という表現についての言及がありますが,「それはおかしい」という指摘に対して「無洗米」は「無研米」ではない,という反論が真っ先にあってもよさそうなのにな,と思いました.なにか意図があったのかな.

本文中の所々に矢印が出てきますが,この書体がとても気になります(たとえば,122頁).正方形対角線矢印(正方形の隣りあう2辺と対角線.独自の分類で,一般的な名称ではありません)という矢印で,これを文中に使うのは珍しいと思います.あ,ところで,こういった矢印の諸々についての雑文を連載させてくれる媒体を探しています.「T嬢」さん,いかがでょうか? ご連絡いただければ企画書を送ります.

2021年8月13日金曜日

異世界語入門 ~転生したけど日本語が通じなかった~


題名:異世界語入門 ~転生したけど日本語が通じなかった~

著者:Fafs F. Sashimi(文),藤ちょこ(イラスト)

発行:KADOKAWA(2018.7.5)


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☆☆☆☆★


異世界転生ライトノベル風の言語習得(研究?)について書かれている本です.異世界の言語を何もわからない状態から学習(解析)している様子が小説形式で展開していきます.所々に現実世界での言語研究の様子などが挟まれていて,著者の出自を垣間見ることができます.それにしても,リパライン語というおそらく架空の言語を文字や文法などを含めて構築してから書き上げたのだと思いますが,大変な労力だったのではないでしょうか.異世界語のスペルチェックや字詰,ルビなどその校正作業は気が遠くなりそうです.節のタイトルがちょっとな,という部分もあるのですが,そんなことは気にならないくらい圧倒的な本です.回収されていない伏線や閉じていない展開が残念です.

2021年8月11日水曜日

ブラッドベリ,自作を語る


題名:ブラッドベリ,自作を語る

著者:レイ・ブラッドベリ,サム・ウェラー

訳者:小川高義

発行:晶文社(2016.6.10)


LISTEN TO THE ECHOES: THE RAY BRADRURY INTERVIEWS

 by Ray Bradbury, Sam Weller and Black Francis

2010


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☆☆☆★★


ブラッドベリへのインタビューが載っている本です.邦題では「自作を語る」となっていますが,自作だけではなく広範な内容について語っています.ブラッドベリが好きな人や,ブラッドベリの仕事に詳しい人には面白いかもしれません.予言の作家は,いまのパンデミックも予想していた,とかいわれそうですが,そういうことを指摘していた作家はたくさんいましたね.

「SFは,アイデアの小説なんだ.(略)どんなアイデアでもいいんだが,頭の中に発生して,まだ現実ではないが,いずれ現実になって世の中を変えて,もう元には戻れない,というようなアイデアがSFになる.世界のどこかを小さく変えるのであっても,そういうアイデアがあって書いたら,SFを書いていることになる.いわば可能性の芸術.ついだってそう,不可能を書くのではない」というあたり,わたしのSF観に近いみたいです.

2021年8月7日土曜日

電柱鳥類学 スズメはどこに止まってる?


題名:岩波科学ライブラリー 298 電柱鳥類学 スズメはどこに止まってる?

著者:三上修

発行:岩波書店(2020.11.25)


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☆☆☆☆★


電柱や電線と鳥類の関係について書かれている本です.全体の1/4ほどが,電柱や電線に関する事柄の記述で,初めは「詳しすぎでは?」とも思いましたが,読み進むと「いやいやこれだけの記述で最小限でしょ」と思えるようになります.感電に関する話題で「電流の水流モデル」が出てきて,これはいかがなものか,と思っていたら,その直後の「コラム」で比喩で理解することについての言及がありました.苦労がしのばれます.街中で電柱や鳥たちを見て楽しみたい方にオススメ.

そういえば,西表島では道端の電柱によくカンムリワシが留まってて,「特別天然記念物でレッドリストなのに!」と驚いたことを思い出しました.

2021年8月1日日曜日

ブルーバックス 三体問題 天才たちを悩ませた400年の未解決問題

題名:ブルーバックス 三体問題 天才たちを悩ませた400年の未解決問題

著者:浅田秀樹

発行:講談社(2021.3.20)


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☆☆★★★


三体問題について高度な数式を使うことなく解説することを目指した本です.「まえがき」によると,著者のいう「高度な数式」とは、高校数学を超える数式のことのようなので,そのつもりで読んだほうがよさそうです.たしかに本文では喩えによる説明が多く,苦心の跡が見られます.が,比喩が恣意的というか,数式を出さないようにするために,かえってわかりにくくなっているように思います.この比喩がわかるのは,数式を知っているひとだけではないかなぁ.

漢字の零は「僅か」という意味を含む,という話の流れで,p63に「気象予報士はれいパーセントといい,決してゼロパーセントといわない」のは,降水確率の0%は十刻みで四捨五入しているからわずかな降水確率が残っているかもしれないからだ,と書かれていますが,これは本当でしょうか? 単に放送中では0を「ゼロ」ではなく,「正しい」日本語の「れい」とよむ,という規則になっているからではないのかと思っていたのですが,どうなんでしょう.